ブタと同居する女性

婚活アプリで出会ったある女性の姉は、個人で廃車の処理をして暮らしていた。

50代半ばの姉は千葉県内の空き地に放置されている自動車のオーナーを探し、陸運局での廃車手続きを代行して収入を得ている。よくそんな商売を思いついたものだ。

ちなみに彼女は50代にして総入れ歯だ。

「シンナーでもやってたの?」

冗談のつもりで聞いたら、若いころにフィリピンで生活していて、ほんとうにシンナーを常習していたらしい。シンナーの体験者に、筆者はそれまでに一度も会ったことはない。

『婚活中毒』(著:石神賢介/星海社)

姉妹は妹が建てた戸建てで暮らしていた。姉は1階で生活。妹は3階で生活。2階はリビング。ある日、姉がミニブタを購入した。通りがかりのペットショップで見つけて、ひと目惚れした。最初はかわいらしかった。ところが、そのブタはどんどん育ち、凶暴性を増す。フローリングの床を掘る。

やがてミニブタとはいえないサイズになり、ペットショップに連れて行き、クレームを言った。店のオーナーは平謝り。ブタは引き取り、代金は返すと言う。

しかし、そのころには、姉はブタに情が移っている。殺処分を心配した。わが子のように育てたブタを見捨てるわけにはいかない。自宅へ連れて帰った。

ブタはさらに成長。150キロに育ち、家の中を走り回る。飼い主の姉にはなついているが、ときどき1階に降りてくる妹には突進する。まさしく猪突猛進。相変わらずフローリングの床を掘り、糞尿もしまくる。犬と同じように散歩に連れ出さなくてはいけないので、周辺では評判になった。

話としてはとても面白いので笑いながら聞いたが、その女性と暮らすのは難しい。