本来の自分とは正反対のキャラクターで評価される

17歳の時、仲間由紀恵さんのドラマ『ごくせん』に生徒役で出演しました。その時に、一夜にして自分の知名度が上がったことを実感。そういう経験をしてしまうと、もう一度その喜びを味わいたいと思ってしまう。でも10代の頃の僕は仕事があるのが当たり前で、周囲の大人から学ぶ姿勢もなく、いただけるオーディションの数自体もだんだん減っていきました。

今思えば天狗になっていたので、当然の成り行きだったと思います。プライドは高いのに、実力はともなっていなくて精神的にも不安定でした。でもそんな不安定さが目に留まったのか、『ワイルド・ヒーローズ』や『ガードセンター24 広域警備指令室』などで、犯罪者役だけはいただくことができたんです。今まで、殺人、放火、拉致監禁…あらゆる犯罪に手を染めました(笑)。そんな僕でしたが、朝ドラに出たいという気持ちだけはずっと捨てきれずにいたんです。犯罪者のイメージがついてしまうと朝ドラには呼ばれないだろうなぁ、と心の片隅で葛藤しながら演じる日々でした。

でも、犯罪者役をいただくたびに、「悪役」については自分なりに突き詰めていきました。犯罪に手を染める人たちの心理を探ると、あまり自分が悪いと思っていなくて、なんだったら正義だと考えている人が多い。そして自己完結型。たとえ仲間がいたとしても、そんなものは替えがきくと思っているんです。

僕は役作りとして、犯罪者のリアルを追求するというより、「犯罪を犯したことがない人々が考える犯罪者像」に焦点を絞り、それを8割として、残り2割に自分の解釈を加えるという塩梅にすることにしました。そうして演じるごとに、「悪役」に対する手応えを感じられるようになったと思います。

僕自体明るいハッピーな性格なので、憑依型の役者ではない。役に入り込むと事故ってしまうという意識がありまして。というのも以前、映画『仮面ティーチャー』(2014年)でキレキャラの不良役を演じた時、焦って役作りしたせいなのか、実家で母に話しかけられた時「うるせーよ!」って怒鳴ってしまったんです。普段家族に対して全然そんなキャラじゃなかったので、母も自分もめちゃくちゃ驚いてしまって。その時に、プライベートの時間も使ってその役に入り込むのはやめようと思いました。犯罪者の役をよくいただく身で、これは危ないと。(笑)

ちなみに、他の高校生役が普通の学ランなのに、僕が衣裳合わせの時に渡されたのはタンクトップだけだったんです。驚いて聞いてみると、「前田さんはずっとタンクトップです」と言われました(笑)。急いでジムに駆け込んで、プロテインをがぶ飲みして必死に身体作りを始めて、同時並行で日焼けサロンにも通いましたね。