人生最大のスランプ

そしてドラマと映画が話題になった『HiGH&LOW』シリーズの轟洋介役も同じくキレキャラでした。インテリ不良の轟役を評価していただくことも多いのですが、そのお話をいただいた時、僕は人生最大のスランプに陥っていました。台本にぎっしりと解釈を書き込んでも不安な気持ちが溢れてきて、現場では声の出し方すらわからなくなってしまう。今までやってきたことの何が正しいのかわからず、収録の間は終始、項垂れていたんです。

小さい頃に空手をやっていて、アクションシーンにいつも評価をいただけていたのですが、まともな演技ができなくなってとことん苦しみました。

これではいけないと、撮影の合間にアクション指導の方のところに行って、徹底的にレッスンを受けることにしました。僕は子どもの頃に、父が格闘技好きということもあって兄と一緒に空手を習っていました。趣味で始めたのに筋が良かったのか、とにかく当時はみるみる強くなったんです。小学3年生で黒帯レベルというところまでいってしまいました。

ところがその流派では安全に考慮して小学5年生になるまで黒帯に挑戦することが許されず、新入りの小学生に教える役回りになってしまったんです。もっと強くなりたかった僕はそれが不満で空手をやめてしまいました。

「今までやってきたことの何が正しいのかわからず、収録の間は終始、項垂れていたんです」

以前のアクションシーンでは、その空手の経験が体の中に生きていると言われていたのですが、轟役の時に空っぽになってしまった。だからこそ、その時に教えていただいたアクション指導を身体にとことん叩き込むことができたのかもしれません。格闘技とアクションは見た目は似ていますが、似て非なるものです。アクションは現実に闘うとしたらガラ空きな部分がある一方、人の目にはより鮮やかに映ります。

僕がその時お世話になったアクション指導には、いろんな俳優が通っていて、昔虐められた人たちの鼻を明かすためにメディアに出て強いところを見せたいという人がいました。ああ、実際虐めた人をぶん殴りにいくことは非合法だからこそ、そうやって鼻を明かすって洒落たやり方だなと感心したんです。アクションってそんな使い方もあるのか!って。僕も無我夢中でアクションに打ち込んで、なんとか轟役を演じ切ることができました。