“天然”の発想の中に、最高の面白さがある
では欽ちゃんはどうかというと、番組作りに関して「丸くなった」という話はあまり聞こえてきません。長さんのように、バンドマン→コント師→個性派俳優というふうにポジションを変えておらず、ずっとスタンスが同じだからなのかもしれませんね。よく関根勤さんや小堺一機さんがなさる“昔話”で、お題を振られたときに少しの時間、答えを考えていると、「はい、ダメ~」と欽ちゃんからダメ出しをされるという話(苦笑)。きっと欽ちゃんならではの“テンポ”があって、まず、それを乱してはいけないということ。さらに、人がすぐに思いつく、いわゆる“天然”の発想の中に、最高の面白さがある…ということだと僭越ながら私は理解していました。
そして、「コント55号」の相方、坂上二郎さんは欽ちゃんの傍らで、ずっと、それができたのだと……。
恐らく欽ちゃんは同じことを香取くんに対しても思っていらっしゃるのではないでしょうか。
これまで色々なところで書いてきたことですけれど、ずっと昔から、SMAPの中で、もっともバラエティの才能があるのは「香取慎吾くん」…というのが香取くんと一緒に仕事をしたことがあるスタッフや放送作家の共通認識でした。
いまなら、多くの方が理解できると思うのです。でも昔は、バラエティ番組という括りの中で、香取くんがいちばん目立ってはいけないような“空気”があったものです。香取くんはそれを自分でよく理解していて、「いまは自分が前に出るべきではない…」ということをちゃんと計算し、“待てる”才能をもっていたのです。
恐らく欽ちゃんはそれを早い内から見抜いていらした…。「新しい地図」が船出したとき、「仕事がないから、慎吾ちゃんを使ってあげようよ」ではなくて、「出てくれるのは素人さんたちで、お客さんも観ている前で何が起きるかわからない『仮装大賞』に、慎吾ちゃんは欠かせないし、自分の後を継げるのは慎吾ちゃんしかいない」ということで、ずっと御自身の傍らに香取慎吾くんを置いていらしたのだと私には思えます。