何年経っても忘れられないパワー系温泉

天下の名湯、有馬温泉(兵庫)も、かなりの個性を持っています。温泉成分の濃度は日本一で、塩分は海水の3倍。マッチョでパワフルな有馬の湯は「金泉」と呼ばれていて、まさに黄金色に輝く温泉なのです(実際に私が初めて浸かったときの印象は、「おみそしるみたいな色」でしたが……)。

中でも旅館「上大坊(かみおおぼう)」は、ほかの施設がおみそしる色と表現するとしたら、ここはもう一段濃い赤だし色。

においのきつい温泉に浸かり、その後首筋からずっとそのにおいがしていると、嬉しくてにやにやしてしまいます(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

濃厚レベルが振り切っていて、タオルも一瞬にして染まります。明らかに肌にまとわりつく色が違うのです。塩気がすごくて湯上がりは汗だらっだら。あのパワー系温泉は、何年経っても忘れられません。

白く濁った温泉以外にも、魅力的な色湯はあります。山奥に建つ「国見温泉石塚旅館」(岩手)は、ビビッドなグリーンの湯がひたひたに満ちています。一見、入浴剤のような鮮やかさですが、もちろん天然のもの。

泥状の湯の花が湯底に溜まっていて、硫黄のにおいも濃厚で絶品。つるやかな肌触りが気持ちよいです。登山客に愛される神秘的な秘湯でした。

灰色の温泉もたまりません。登別温泉(北海道)には、灰色に濁った硫黄のにおいたっぷりなしっとり湯がこんこんと湧いています。白濁も美しいですが、灰色もまた力強くて魅力的でした。