終わった自分のレースも、映像を見ながらチェックします。「ここでもっと動けばよかった」とか「ここは動かずに待てばよかった」とか、反省することはいろいろ。でも、失敗から目を背けるのではなく、しっかり研究して次に活かすことが大事なんですね。

そういう意味では、毎日が勉強です。最近学びになったのは、ボートレーサーの方との交流。ともに公営競技で、コンマ1秒を争います。レーサーの方たちの話をうかがうと、馬とボートという違いはありますけど、乗っている者同士のコース取りの駆け引きや、速さに懸ける思いなど、共感する部分もたくさんあって、大いに刺激を受けました。

 

一度だけ流した嬉し涙

今年デビュー4年目。デビューした年の中央競馬での勝利数は6、2年目は14、3年目は27、そして今年は今の時点で23勝(8月4日現在)と、着実に勝ち星が増えているのは嬉しいことです。でも、騎乗技術はまだまだ。もっとうまくなりたいし、もっと勝ちたい。

実は、デビューして一度だけ、涙を流したことがあります。それは16年3月24日の初勝利のとき。ついに勝てた、と自然に嬉し涙が溢れていました。

両親は、私が初勝利をするまでは、毎回、観に来てくれていたみたいです。今は、毎週、レースのたびに母から連絡がきて「気をつけてね」と言われます。接触事故や落馬だとか、万が一のことが心配なのでしょう。私自身は危険をともなうとわかったうえでこの職業を選びました。常に細心の注意を払って馬に乗っているものの、そのときは仕方ないと覚悟もしています。あと、母が必ず言うのは「忘れ物をしないように」。そこはまだ子ども扱いなんですね(笑)。とはいえ、私も8月で22歳になります。

ふりかえってみると、中学校を卒業し、同級生が高校生活という青春時代を満喫しているときに、私は競馬学校へ。寮生活をしながら、3年間、朝から晩までみっちり、騎手になるための勉強とトレーニングで、遊ぶ時間はありませんでした。

でも今、ジョッキーとしてデビューして、この仕事が楽しいと心から思える。あのとき、くじけそうになりながらも頑張ってよかったと、しみじみ感じています。