歌舞伎の道は元奥様にとって青天の霹靂だった?
香川さんは1995年、元CAの女性と結婚し、一男一女に恵まれますが、2016年に離婚。当時その件についてワイドショーからコメントを求められた際、私は「奥様は、まさか香川照之さんが歌舞伎俳優になるなんて思っていなかったのではないか。梨園の妻になる覚悟がないまま、大変な想いをされていたのではないか」と言った記憶があります。
香川さんが、約40年間、絶縁状態にあった父の市川猿之助さん(当時。現・猿翁さん)と“雪解け”したのは2011年のこと。2004年に長男が誕生したことでも伝統を守らなければならないという想いが強くなったといいます。1968年に父・市川猿之助さんと離婚した浜木綿子さんの了承を得て、香川さんは市川中車を、長男は市川團子を襲名しました。
東京大学卒のインテリ俳優・香川照之とは結婚したけれど、夫がそれまで絶縁状態にあった実父(市川猿翁さん)と電撃和解したうえ、夫のみならず息子まで歌舞伎役者の道を歩むことになるとは、奥様にとっては「青天の霹靂」だったのではないでしょうか。
私は、先輩にも後輩にも歌舞伎役者が多い青山学院で初等部から大学まで16年間過ごしたため、特に、2学年先輩だった坂東三津五郎さんや、1学年後輩の片岡市蔵さんとは近しい関係にありました。
歌舞伎役者の方は、私と同じ「文学部日本文学科」に進学することが多いので、三津五郎さんは初等部から大学の学科までの生粋の先輩でした。
そんな“環境”から、“梨園の妻”がどれだけ大変であるかも間近に見る機会がありました。特に憶えているのは、三津五郎さんの前妻である寿ひずるさんが跡継ぎの男の子をもうけるために、どれだけ苦労をされていたか……です。三津五郎さんと寿さんの間には先に2人のお嬢さんが誕生。現在、歌舞伎役者として立派に活躍している巳之助さんは第3子なのです。