得意料理のひとつは
“お殿様の鶏飯”

前の日に食べたものを思い出せなくても、昔食べたものや得意料理はパッと思い出せます。たとえば鶏飯。つい最近も、助手から「樋口さんの鶏飯、本当においしかった。また食べたい!」と言われ、「“お殿様の鶏飯”ね。レシピを教えるからつくってよ」と申しました。

“お殿様の鶏飯”というのは、私が得意としていたおもてなし料理。栄養満点で、しかも材料費もそれほどかかりません。大学時代に出会った親友の結婚相手が、その料理の伝わる由緒ある一族だったのです。

(イラスト=マツモトヨーコ)

若い頃、親友のお宅でこの鶏飯を出していただき、あまりにおいしかったのでつくり方を教えていただきました。ざっくりご紹介すると、こんな感じです。

①鶏の胸肉を、ショウガを入れたお湯で茹で、茹で汁と身を分けておく。
②錦糸卵をつくる。
③干しシイタケを甘辛く煮て、薄切りに。
④炊いたご飯と③の半量を、飯台でざっと混ぜておく。
⑤④を器に盛り、ほぐした①、②、③の残り半分、青ネギの小口切り、福神漬けをのせ、茹で汁をベースにしたスープをかける。

つくり始めた頃は、教えていただいた通り、律儀に鶏ガラでスープを取っていました。でもあるときから、「そ~んな、面倒くさい!鶏肉を茹でてスープを取れば一挙両得」と簡略化。ただし、「福神漬けは必ず使うべし」という教えは守っています。

大きな飯台にご飯を、大皿に具を盛っておき、あとはセルフサービス。学生たちが遊びに来るなど、うちで大勢集まるときによくつくりました。

言うなれば鶏スープ茶漬けで、色とりどりの具材の取り合わせが絶妙。来客など人数の融通がきくのでおすすめです。