朝ごはん、晩ごはんを
分担していた頃
料理について思いをめぐらせていると、食卓を囲む人たちの笑顔まで、映画のように脳裏に浮かびます。そして“料理の音”もまた、懐かしい記憶です。
2番目の連れ合いは早起きで、私は夜更かしで朝寝坊。ですから寝室兼それぞれの仕事部屋は別にし、彼は1階、私は2階でした。
朝、目が覚めると、階下の台所からトントントンと包丁の音が聞こえてきます。「おぉ、やっちょる、やっちょる」とうれしい気持ちでベッドから出て、着替えて1階に下りると、朝ごはんが半分以上できているのです。トーストと目玉焼き、サラダのこともあれば、ご飯に塩鮭、味噌汁のこともありました。そのかわり、晩ごはんは私の役目です。
ごく自然に分担できたのは、2人とも、食べることも料理も好きだったからでしょう。「老後はここで一緒にカレー屋をやろうか」などと語り合ったこともありました。連れ合いは60代半ばで病に倒れたので、残念ながら見果てぬ夢に終わってしまいました。
7年前に家を建て替えたら、台所の使い勝手がすっかり変わってしまいました。その頃からヨタヘロ期に突入したこともあり、徐々に料理する回数は減りました。今では食事の支度はシルバー人材の方や娘の手を借り、食べたものをメモ書きする毎日です。
……と、いろいろ思い出していたら、私も久しぶりに、“お殿様の鶏飯”が食べたくなってきました。今度、シルバー人材センターの方にレシピを伝授して、つくってもらおうかしらん。