けいこ 自分ではある程度、父親に頼らずに生きてきたと思っていたけれど、自分に子どもが生まれてからは、〈じぃじ〉として頼らせてもらってるという部分はあります。
和夫 だけど僕も歳だからね。小さい子は動きまわるし、付き合ってると腰を痛めそう。だから、できるだけ離れて可愛がるようにしようと。(笑)
けいこ そう言いながらもよく遊んでくれているよね。うちは兄と私の2人きょうだいだけど、子どものとき、お父さんにいろいろやってもらった記憶がないから、今、うちの子と遊んでいるのを見ると、微笑ましいのと同時に、不思議な気がする。
和夫 でもね、あなたたちの文化祭、体育祭、すべて行きましたよ。学校行事は万難を排して全部行っていたんだよ。あとで何を言われるかわからないから(笑)。会わずに帰ったりしていたから知らなかったかもしれないね。
けいこ 全部とは知らなかった。うちはお父さんが外で働いて、家のことはすべてお母さん。だからお父さんの存在は……傍観者ってところかな。とにかくいつも仕事で忙しかったもんね。
和夫 あなたたちは元気でヤンチャな息子と娘で、反抗期やら思春期やら、いろいろあったけれど、全部、妻に任せてしまってた。「うまくいってるな」と思って安心しているんだけど、実は大変だったというのをあとで知らされたり。お母さんはよくやってくれたよね。感謝しています。
けいこ 恋愛話はお母さんにはしていたけれど、お父さんにはしなかった。恥ずかしいというのもあったし……。
和夫 僕がヤキモチを焼くとでも思ってたんじゃないの。
けいこ 父親として、いろいろ言いそうだなと思って。
和夫 言いませんよ。そりゃ心配だけど、娘の気持ちを尊重して、やりたいと思うことをやればいいと。これまで進路にしろ、何をするにしろ、反対したことはないよね。
けいこ 「信頼してる」というスタンスで、突き放されてた。(笑)
和夫 僕自身、末っ子で、うちの両親から放し飼いのように育てられて、それが心地よかったからね。あなたたちも、愛をもって、自由に育つに任せておりました。結婚するときも、まったく反対しなかったし。
けいこ そもそも、私は相談もしなかった。「早く結婚しなさい」とはずっと言われてたけどね。
和夫 僕は、あなたが選んだ人なら相手が誰でもいいんです。自分の人生なんだから、自分で責任をもってやるしかないしね。あなたが結婚したとき、すごく嬉しかったんだよ。僕が「娘が嫁ぐ朝」という曲をつくったのは28歳のときだけど、「娘を嫁がせるって、こんな心境だろうな」と、想像をふくらませて歌詞を書いたんだよね。
だけど、いざ現実に自分の娘の結婚となると、「式場はどうする?」「衣装合わせは?」とか、やらなきゃいけないリアルなことに引っ張られて、歌の世界に書いたように、思いが溢れたりすることはなかったなあ。最近ですよ、孫たちを見て、「ああ、娘は結婚したんだなあ」と実感するようになったのは。
けいこ 遅~い!