和夫 僕の歌で好きなのはあるの?あ、知らないか。

けいこ ……。

和夫 無理やり言わなくていいよ。(笑)

けいこ メロディーが好きなのは「セプテンバー」かな。

和夫 地味~。20代のときにつくった曲だよ。まあ、それはそれとして、普段はそんな話、しないからなあ。うちの家族は音楽で通じ合っているわけでもなく、それぞれに自分の世界をもっているよね。

けいこ お兄ちゃんもそう。みんな、個人主義かもしれない。

和夫 ベタベタしてないし。あなたは音楽は好きだけれど、やりたいのは絵なんだよね。そこはお母さん似かな。

けいこ お母さん、趣味で絵を描いてたからね。

和夫 あなたは絵本をつくっているでしょう。子育てしながら、よく描く時間があるなあと思って、感心してるんだよ。

けいこ 子どもが昼寝をしている隙に描いたり、夜、寝かしつけてからとか。趣味として始めたけれど、今はもっと本格的にやってみたいなあと思ってる。

わが家は外で働く父親と家を守る母親と、はっきり役割分担ができていたよね。それはある意味、機能的だし、これはこれで何十年も連れ添った夫婦の形ではあるんだけど、私はお母さんが家のことをずっとやってきて、苦労しているのを近くで見てきて……。

和夫 で、思うところがあった。

けいこ 家庭を軸にしつつ、その上で自分の生きがいがあるのが理想かな、と。お母さんも私に、「家のこと以外もやったらいい」と言ってくれているし。

和夫 うん、自分の思うようにやればいいよ。

<後編につづく

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