垂れ流しトイレの廃止
日本国有鉄道は1968(昭和43)年8月14日の第88回業務運営会議で「大都市発着または通過列車の便所使用制限方法と、汚物処理装置の地上設備の設置方法の検討を急ぐこと」と通達を出しました。
これを受けて8月22日には「列車トイレット改良の基本方式」として次の5項目が提示されました。
1.車両には汚物を貯留して基地に戻ってから処理をする循環方式を採用する
2.地上設備における処理方式、規模、市町村側との関連調査、などを実施する
3.粉砕式の今後の処置を検討する
4.都市部での便所の使用制限を実施する
5.さしあたり東海道線、山陽線から実施する
1968(昭和43)年9月3日の常務会で決定したプロジェクトにより、新幹線に使用した循環式の汚物処理装置の取り付けを行いました。
対象車両は利用頻度より(1)夜行の特急急行、(2)昼の特急急行、(3)長距離団体用とし、これら車上設備の改良に350億円、地上設備の新設に450億円で総額800億円となる巨額のプロジェクトとなりました。
1969(昭和44)年度には京都の向日町(むこうまち)、大阪の宮原、東京の品川の3基地に地上設備を設置し、気動車特急「白鳥」「かもめ」、列車急行「銀河」「きたぐに」などに循環式を取り付けました。
また1970(昭和45)年度には東京の田町、福岡の南福岡に地上設備の工事を着工するなど、各地で車上設備や地上設備の工事が始まりました。
1986(昭和61)年度末の集計では地上設備は40基地に整備され、汚物処理装置を取り付けた車両は5350両にまで達しました。つまり、国鉄が分割民営化される直前の時点で、全汚物発生量の75%が衛生的に処理できるようになったのです。