病名公開後、力強い詩が多数寄せられた

映画主題歌を含むニューアルバム『いまダンスをするのは誰だ?』が、2023年8月16日にリリースされた。今作の詩のほとんどは、一般の方からの提供によるものだ。世間に病名を公表したのち、樋口さんの元には数多くの詩が寄せられるようになったという。病気の公表は、知人の言葉通り、樋口さんに“新たな出会い”をもたらした。

パーキンソン病であることを公表してから、「ミライ」さんというペンネームの方から定期的に詩が届くようになったんです。その中で、「父として」と「笑う奴」の二つの詩が抜きん出ていて、びっくりしたんですよね。それで、この2曲とも「曲をつけさせてください」とこちらからお願いしました。

今回のアルバムでは、僕は1曲しか詩を書いていないんですよ。他は全部、一般の方から送られてきたものです。特に詩の募集などはしていなくて、皆さんがやむにやまれず送ってこられた作品が自然に集まってできました。僕は、本当に感動しない限り曲をつけられないタイプなので、今回のアルバム収録作品は何かしら僕の心を動かしたものだということですね。

どの詩も、口だけじゃない前向きさがあります。何かしらの病気やトラブルを抱えている方たちから送られてくることが多いんですけど、そういう人たちが書く希望の詩は、すごく説得力がある。おざなりの「がんばろう」ではなく、自分の体験をもとに掬い取ってきた言葉が綴られているので、元気をもらえるんです。やはり、身を削って創られているところがあると思うんですよね。だからこそ響くのではないでしょうか。

ニューアルバムも、公開予定の映画作品も、何らかの当事者だからこそ表現できる力が根底にある。上辺だけの言葉には宿らない力が、人々に勇気を与え、優しい気持ちを呼び起こす。

一生懸命な姿って、ある意味みっともないじゃないですか。裏返しになった亀がなんとかもとに戻ろうとする姿。あれ、本人は必死でしょう。でも、周りから見るとそういう姿は滑稽に映る。映画では、そういうなりふり構わず必死なところをぜひ観てほしいなと思います。

アルバムに関しては、今回ほとんどの詩を他の人が書いたということもあり、今は逆に詩を書きたい気持ちが高まっています。僕はもともと、詩も曲も両方書くタイプなので。

「表現」と名のつくものは何でもやってみたいと思っているので、今回“演技”に挑戦できたのは貴重な経験でした。他にも、ストーリーと絵を自分で描いた小冊子をうちうちで限定公開していて、その作品は1話読み切りで20話ほど続いています。開催頻度は減りましたが、全国各地でのポストマンライブも未だにやっています。これらの創作活動が、すべていい形で音楽にフィードバックされていく気がするんですよね。

いまダンスをするのは誰だ?
●ストーリー
功⼀は仕事⼀筋⼈間で⽣きてきたが、家庭を顧みず、妻とはすれ違いが続き、 娘とも仲が悪かった。ある⽇、若年性パーキンソン病だと診断されるも、それを受け⼊れられず、⼀⼈孤独を抱えてしまう。職場でも仲間が離れていく。そんな中、 パーキンソン病のコミュニティ「PD SMILE」に通い始める。友⼈が出来、本音を話せるようになり、⼈とのふれあいの⼤切さを痛感する。料理にもチャレンジし⾷⽣活も改め、不仲だった娘ともダンスを通じて、お互いの関係が改善されていく

●パーキンソン病とは
パーキンソン病とは中脳の⿊質のドパミン産⽣細胞が減少することにより、寡動(動きが遅く少なくなる)、筋強剛(筋⾁が固くなる)、振戦(ふるえ)、姿勢調節障害などの症状をきたす疾患です。上記のような運動症状に加えて、⾮運動症状として、便秘や起⽴性低⾎圧などの⾃律神経障害、むずむず脚症候群、嗅覚障害、抑うつや幻視などの精神症状を合併することも知られており、しばしば運動症状の前駆症状として出現します。⽇本での有病率は10万⼈に対して100〜300⼈程度です。(⽇本⾚⼗字社医療センターより)

樋口了一デビュー30周年
自身が初主演した映画主題歌『いまダンスをするのは誰だ?』収録
待望のニュー・アルバム
樋口了一
「いまダンスをするのは誰だ?」

2023年8月16日発売 TECG-25134  2,500円(税込)

<収録内容>
1.いまダンスをするのは誰だ? 
2.タコ公園
3.笑う奴
4.父として
5.Return match
6.光のランナー
7.手紙〜親愛なる子供たちへ〜<Bonus Track>
8.いまダンスをするのは誰だ?(Instrumental)

<INFORMATION>
テイチクエンタテインメント
樋口了一オフィシャルサイト