親としてどう応援できるか
彼の中にある“料理”のシード(種)がサインを送ってきたのだ、とピンときましたね。とはいえ、この道で一人前になるのは大変なこと。
いったんはこう伝えました。
「お寿司屋さんというのは寿司を握るだけが仕事じゃないんだよ。カウンターの向こう側のお客さんと会話をするんだ。政治経済をはじめいろいろな話題に対応しなきゃいけない。それも寿司を握りながらやるんだ。だから高校だけは行って一般常識や知識を学んでからにしろ。もし高校を出た時に、やっぱり寿司屋をやりたいんだったら、そう言ってくれ」
高校を出た三男の決意は、変わりませんでした。やはり「寿司屋さんになりたい」と。
これは本気だとわかって、親としてどう応援できるか考えました。そして、寿司そのものよりも、料理の幅を広げるために最初は日本料理全般を学んだほうがいいと思ったのです。
また、それなら一流の日本料理屋に修業に行かせようと。私が知る限りですが、京都の一流の日本料理屋といえば吉兆(きっちょう)。
料理人のご子息も働きに来るでしょうから、何の実績もないいちばんのペーペーで入れば、ただでさえ厳しい修業がもっと厳しくなるはずです。これが私なりのベストでした。