「世の中そんなことになってるの!」
ところがです。
数年前に30代の二男と同居を始め、彼の部屋に入ってみると、壁一面にスニーカー! スニーカー! スニーカー!
「こんなにたくさん、いつ履くの!?」
聞けば、今、若者の間でスニーカーはファッションに欠かせないアイテムになっているとか。
コレクターもいて、なかには美術品のように高値で取引されるものまであるというのです。
「世の中そんなことになってるの!」
大いに刺激された私は、さっそくネットでスニーカーを探して、数あるなかからいちばんシルエットが美しいと思ったナイキのコルテッツというタイプを買いました。
届いたその日のことは、今でもはっきり覚えています。
足を入れた途端、ふわふわとまるで雲の上を歩いているみたい。今まで履いていた靴はなんだったんだろうと思うほど、どこまでも軽やかに歩いていけそうでした。
それ以来、春夏用、秋冬用と、季節ごとに新しいスニーカーを購入し、今では、すっかりスニーカーのファンになりました。
この靴があれば、この先80代、90代になっても、自分の足で行きたいところに行って、やりたいことがやれそうです。
※本稿は、『Life Closet』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
『Life Closet』(著:西ゆり子/扶桑社)
70代の現役スタイリストとして活躍する西ゆり子、初のフォトエッセイ。幼いころから今に至るまでの服へのこだわりや、服を選ぶときの考え方、人生の喜びや悲しみとともにあった服のことなど、「服」と「生き方」にフォーカスした44篇を収録。