縁の下の力持ちがいなければ成立しない

彼自身に「本当は内野手がやりたい」という思いがあったことは痛いほど分かりました。それでも「チームのために」という考え方のもと、最後は納得してくれたのです。

それによってチーム全体の骨格が決まり、その後のチーム状況がすごく良くなっていきました。

森林監督「選手を指導すると一口に言ってもさまざまな方法があります」(写真提供:東洋館出版社)

最終的に彼は二番手のキャッチャーに収まりましたが、このように一人の高校生がチーム事情を理解し、ポジションを移ってくれたことには非常に感謝していますし、その決断には敬意を表するほかありません。

チームというのは試合で華々しく活躍する選手だけでなく、やはり練習の段階から縁の下の力持ちがいなければ成立しません。

彼がコンバートを受け入れてくれたことで、レギュラーのキャッチャーが思い切ってプレーできるようになり、二番手争いも熾烈になってチームに刺激が与えられたと思います。

彼が自己犠牲を払ったことは、周りの選手も当然分かりますし、その結果、チームに貢献するとはどういうことかを全員がよく理解してくれたとも思っています。