子どもの野球が習い事になっている

この親子間の距離の近さは、親が先回りして子どもの行く道にレールを敷いてしまうという問題にもつながってきます。

例えば、小学6年生や中学3年生の夏にチームが負けた場合、中学や高校に入るまでの約半年の間に、野球塾に通わせる保護者がかなりいます。

森林監督「この親子間の距離の近さは、親が先回りして子どもの行く道にレールを敷いてしまうという問題にもつながってきます」(写真提供:東洋館出版社)

“子どもの野球が習い事になっている”という問題がありますが、中学生や高校生でも類似する問題が起きているのです。

特に小学生に言えることですが、子どもだけで自然発生的に野球を楽しめる場をもっと作っていかなければいけません。そうでなければ、野球がどんどん硬直化したものになっていってしまうだけだと思います。それは、指導者に対する評価も同じです。

多くのメジャーリーガーを輩出するドミニカ共和国では、輩出したメジャーリーガーの数が指導者の評価の対象となりますが、日本では、甲子園で勝った指導者ほど評価される傾向にあります。これでは結局、勝ったほうがいいという流れになってしまいます。

そうではなく、例えば、私立の強豪校と比較して能力はそれほど高くない選手たちを伸ばしたといったことや、将来の指導者をたくさん育てたなど、指導者を評価する視点はたくさんあるはずです。

しかし現在は、全国中継される甲子園で勝つことがすべて。これではいつまで経っても、高校野球は変わりようがありません。