森林監督「保護者が子どもの将来に対して、過度に期待することも大きな危険を伴います」(写真提供:Photo AC)
2023年夏、第105回全国高等学校野球選手権大会で、107年ぶりの優勝を果たした慶應義塾高校野球部の勇姿をテレビの前でご覧になった方も多いのではないでしょうか。慶應義塾高校野球部の監督を務めるのは森林貴彦さん。チームのあり方や試合への臨み方など、監督が考える高校野球論とは? その森林監督「保護者が子どもの将来に対して、過度に期待することは大きな危険を伴う」と言っていて――。

加速する小中の野球離れ

高校野球の未来を考えた場合、このままではやはり“衰退”は避けられません。現実として、小学生や中学生が、やるスポーツとして野球を選ばなくなってきており、全体の少子化のペース以上に子どもの野球離れは加速しています。

ただし、甲子園で行われる野球のレベルそのものはさほど変わらないと思います。全体で野球をする子どもは減ったとしても、その中でも選りすぐりの、各都道府県で1、2位を狙うような学校で日本一が争われる限りは、レベルはそう簡単には落ちないでしょう。

しかし、それを支える土台が細ってきていることは間違いないので、その先がどうなるかは本当に分かりません。実際、賢明な親は「子どもに野球はやらせない」という選択を始めています。

そもそも野球はミスが付き物のスポーツであるにもかかわらず、空振り三振をしたら「黙ってそのまま立っていればボールなのに、なぜ振るんだ!」と叱られたり、逆に見逃し三振をしたら、それはそれで叱られたりと、そんな場面を目の当たりにすれば、野球を敬遠して当然でしょう。