森林監督「一人の人間同士として意見交換するときには、お互いの関係性がフラットであることが大前提」(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
2023年夏、第105回全国高等学校野球選手権大会で、107年ぶりの優勝を果たした慶應義塾高校野球部。その勇姿をテレビの前でご覧になった方も多いのではないでしょうか。その慶應義塾高校野球部の監督を務めるのは森林貴彦さん。チームのあり方や、試合への臨み方など…監督が考える高校野球論とは。森林監督いわく「一人の人間同士として意見交換するときには、お互いの関係性がフラットであることが大前提」だそうで――。

高圧的な押し付け指導がなぜ蔓延しているか

なぜ高校野球に関わる大人、特に指導者が高校生に対してエゴイスティックになってしまうのでしょうか。

その大きな理由の一つに、“自分がされてきたことをしてしまう”という人間の特性のようなものが現れてしまっていることが挙げられると思います。

自分が現役時代に指導者から体罰を受けたり、高圧的な言動をとられたりすると、それが自分の中のベースになってしまい、自覚がないままに同じ言動をとってしまう。このような負のスパイラルを生んでしまうカラクリがあるのだと考えられます。

また、自分自身の価値観を押し付けがちな点も看過できません。これは高校生を子どもだと思っていることに起因しています。

“球児”という呼び方にも顕著なように、高校生を子ども扱いし、指導者である自分は大人という意識のもとで、自然と上下関係を発生させてしまっているのです。

これでは本当の意味で、良いコミュニケーションを図ることはできません。一人の人間同士として意見交換するときには、お互いの関係性がフラットであることが大前提。

しかし、上から目線になってしまうと、価値観の押し付けがいつまで経ってもなくならないのです。さらに、指導者が効果的だと思うことを、自分の目の届く範囲でやらせたほうが早いということも大きな理由の一つだと考えられます。