フラットな人間関係を作るための方法

上田先生は間違いなく恩人です。上田先生のもとで野球をしたのはわずか1年でしたが、いまでもはっきりと覚えているのは、ご自身を“監督”と呼ばせなかったことです。

監督という肩書で呼んでしまうと上下関係が固定化され、フラットな人間関係が作れない。そういったことを嫌って、高校生である私たちはかなり年長である監督を“上田さん”と呼んでいました。

チームのトップである監督を“さん付け”で呼ぶことで距離感が一気に縮まり、一緒に勝利を目指す仲間、もしくは少し上の先輩という感覚で認識できるようになったと思います。

私自身もまったく同じ思いがあり、選手や学生コーチには監督ではなく、“森林さん”と呼ばせています。

40代後半の大人と高校生がフラットな関係でいられるのはまず不可能ですが、こちらが選手側に少し近づいていってあげることで、言いたいことがあったときに言える関係になりやすいはずです。その関係性を保つために、この方法を現在も踏襲しています。

※本稿は、『Thinking Baseball ――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。


Thinking Baseball ――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値" 』(著:森林貴彦/東洋館出版社)

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、中止となった全国高等学校野球選手権大会。甲子園を目指す選手たちに大きな喪失感を与えることになった今夏の出来事は、高校野球のみならず部活動全般の意義を問い直す一つの契機にもなりました。

「高校野球は変わらないといけない! 」坊主頭強制無しで春夏連続甲子園出場を決めた慶應高校の"考える野球"を解き明かす。