「これからが長いわよ」の本当の意味は

生前、大家さんが病院から施設に移ることになった際、僕は引っ越すことになりました。そのときにいつもの笑顔で言われた「矢部さん、これからが長いわよ」という言葉の意味を、ずっと考えています。「引っ越してもご縁は続くじゃない?」という意味だったかもしれません。だけど僕にとっては、これからも人生は続くということだったのかなと。大家さんが亡くなってから1年経った今は、そう思います。

父親が絵本作家という環境もあってなのか、幼い頃から絵は身近で、描くことが好きでした。ですので、これからも何か描けたらいいなと思っています。僕は自分の思っていることを口でしゃべるより、時間をかけて漫画にしたほうがうまく伝わるとわかっていまして。お笑い芸人としてはどうかという感じですが。(笑)

中学校くらいまで僕は友だちが少なく、高校でも周りに馴染めずにいました。そんなときクラスに社交性バツグンの入江(慎也)くんがいて、僕も仲間に加えてくれたんです。お笑いも、入江くんが文化祭で漫才をやりたいと言い出し、みんなが断るなかで僕が最後に残ってしまったのが、「カラテカ」というコンビを組んだそもそものきっかけ。そのことに僕はとても感謝しているんです。僕の人生を、最初に変えてくれたのは入江くんだから。

実は2019年2月に開いたカラテカの単独ライブで、高校時代のエピソードを漫画で描き、VTRにして会場で流したんです。漫画は、入江くんと出会ってからお笑いを始めるまで、順を追って。一方ネタのほうは、今やっているものから遡っていく。で、最後に高校の文化祭でやった最初のネタをやるという、手塚先生の『火の鳥』のような構成にしました。(笑)

ライブ用に描いた漫画は、そこで終わりではなく「続く」だと、僕は思っています。入江くんと友人であることに変わりはありません。今すぐではありませんが、いつかその続きを描きたい。でも売れない芸人の話とか、やっぱり地味で誰も読んでくれないかなあ(笑)。どう思われますか?