夫の定年後、海岸沿いに集落が点在する過疎地に移住し……(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
2022年2月以来、1年半以上にわたり配信してきた「読者のひろば」。反響の大きかった記事から、あらためて読み直したい「編集部セレクション」をご紹介します。

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時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは山口県の60代の方からのお便り。夫の定年後に田舎暮らしをはじめたものの、最初は戸惑うことも多かったそうです。でも、ある日嬉しいことが――。

愛称で呼ばれて

海岸沿いに集落が点在する過疎地に9年前から住み始めた。それまでは夫の転勤先の都市部にばかり住んできたが、勤めを終えた夫のたっての希望で田舎暮らしへと移行。多少の不便はあるものの、のどかな時間が流れる生活にすっかり馴染んだ。

移住した当初は戸惑いが多かった。まず地域の人たちとのつきあいの濃淡。冠婚葬祭や集落行事への参加の判断……。ほとんどの人が幼馴染だし、当然のように、互いを「ちゃん」付けで呼び合っているので、疎外感を覚える。

誰かと親しくなっても、私から「~ちゃん」とは呼びかけづらいし、私がそう呼ばれるとは想像しにくい。

あるとき、県庁のある市街地まで所用で出かけた。駅前を歩いていると「~ちゃん」と呼びかけられた。子どもの頃の私の愛称。まさか私? 振り返ると、わりと親しくなっていた集落の女性がいた。

日頃は愛称では呼ばない人だったので意外だったが、よその街で知った顔を見かけてとっさの反応だったのかもしれない。私にとってはくすぐったくも新鮮で、うれしい出来事だった。


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