(イラスト:おおの麻里)
「将来に不安を感じる人こそ終活をしてほしい」と語る終活カウンセラーの武藤頼胡さん。「その日」までを楽しく生きるために必要な準備とは(構成=上田恵子 イラスト=おおの麻里)

幸せを感じる3つの条件

終活の専門家として活動を始めて13年、これまでたくさんの方の相談に乗ってきました。ここ10年近くで、終活を巡る状況は大きく様変わり。

日本は「人生100年時代」と言われるほど長寿社会になり、100歳以上の高齢者は、2022年になんと9万人を超えました。30年前、きんさん・ぎんさんが人気を博した頃に約4000人だったことを考えると、隔世の感があります。

それでは、長生きは喜ばしいことかというと、そう簡単ではないようです。私が講演で「100歳まで生きたい人は?」と聞くと、ほとんど手が挙がりません。「100歳まで生きる準備をしている人は?」と聞くと、さらに減ります。残念ながら長寿はリスクであり、不安だと考える人が多いようです。

その不安の原因をひもといてみると、「お金は足りるのか」「周囲から厄介者扱いされるのではないか」「健康が心配」などさまざま。私はそんな不安を感じる人こそ、終活をしてほしいと考えています。

なぜなら終活は、人生の終わりのための準備だけでなく、同時に不安を解消して、今の生活を楽しむためのものだからです。そういう意味では「死に支度」というより、むしろ「生き支度」と捉えていただいたほうがいいのかもしれません。

人は「健康」と「生活していけるだけのお金」、そして「生きがい」があると、幸せを感じると言います。ですから、生き支度ではこの3つを充実させることを目指しましょう。

生き支度に正解はありませんし、一人一人違っていい。もし自分に合った「生きがい」がわからないなら、「過去(どのように生きてきたのか)、現在(今、どのような状況下にあるのか)、未来(将来どうしていきたいか)」を、エンディングノートなどに書き出してみるのも一つの方法です。

すると、自分が大事にしたいことや、大切にしたい縁が見えてくることも。ほかにも、生き支度を考えるヒントをまとめたので、参考にしてください。

人間はいつか必ず死を迎えます。しかも、その日がいつくるのかわからない。だからこそ、日々楽しく生きて、「いい人生だった」と思って世を去れるようにしたいですね。