パックスから結婚に移行するカップルも

そこで、ようやく21世紀を前に、パックスの制度が生まれたわけです。

ただ、パックスも完全ではありません。

『フランス・ブルターニュで見つけたお金をかけない豊かな暮らし』(著:シャルバーグ八千代/大和書房)

私の友人で、60歳を前にしてパックスから正式な結婚に移行したカップルがいます。うちと同様、フランス人男性と日本人女性のカップルでした。その理由は財産でした。

正式な結婚であれば、残された夫か妻が自動的に相続人になりますが、パックスではそうなりません。パートナーを相続人にしたい場合、遺言書を書かなければなりません。それでも他の親族と揉めることはあり、それを心配したご主人が結婚を申し出たそうです。

また、パックスを結婚へのお試し期間ととらえる場合もあります。そして10年以上一緒に暮らして子供ももうけ、その後パックスから正式な婚姻に移行するカップルも結構います。だから、結婚式は成長した子供連れとなります。

面白いことに、フランスでもいつまでも一人でいると「早く誰かと一緒になったら」といった親からの圧力はあるようです。それが必ずしも「結婚」という形式を求めないのが、日本と違う点です。

我が家の場合、東京とタヒチという遠距離恋愛でした。一緒に暮らすことを決めた時、正式に結婚という手続きをするかしないかを話し合いました。彼はどっちでもいいというスタンスだったので、結局私主導で正式な結婚を選びました。日本では当たり前、ということではなく、私個人にとって、考えるまでもなく当たり前のことだったからです。

30年近く過ぎた今考えると、正式に結婚してもしなくても変わらなかったかもしれませんが、互いに了解しての契約ですから、どこかその枠に守られていた気はします。そして、生活上の実務的な面では、別れない限りメリットが多いと思います。