燃え上がる前に鎮火する
百田 クレーマーをモンスター化させないためには、演技も必要ですよね。たとえばお客様がボールペンのバネが取れたと言ってきたら、「すみません!大変だ」と驚いてみせ、「お召し物が汚れませんでしたか?」「お怪我はしませんでしたか?」と、ちょっと大げさに言う。怪我なんてするわけはないのですが、先にこちらがそう言うことで、最初はすごい剣幕だった方も「大丈夫です。壊れていたから、交換できたらいいなと思っただけで」と急にトーンが下がります。そこですかさず「すぐお取り換えします」と言って、お客様から見えるところはわざと走って取りに行く。(笑)
生活 燃え上がらせないうちに鎮火させるのが大事ですね。
呑屋 やはりお金をいただいている以上、お客様として大事にしなくてはいけない。皆さん、家でもお酒は飲めるし、ご飯も食べられるのに、わざわざお店に出かけるのですから。それなのに主役になれないのはストレスなわけです。そういうお客様の心理を想像しながら接することで、トラブルは減ると思います。
生活 企業では、モンスターに限らず、対応マニュアルは充実しています。ですが、クレームに対応するばかりでは、お客様の声を商品改良やサービス向上に活かせず、本末転倒になりかねません。
呑屋 すべて唯々諾々と聞いてしまうと、モンスターは突っ走ってしまう。僕は、お客様とは基本的に対等な関係だと思っています。極論すれば、気に入らないことをされたらお金をもらわずに「出ていけ!」と言えばいい。たとえば僕が作った料理を、店内中に響くような大声で、聞こえよがしに「こんなのお客さんに出してるの。へぇ」と言われた時。明らかに営業妨害なので、そういう人からはお金をもらわず、帰っていただく。それが一番、相手にも伝わりやすい。
百田 どんなクレームを言われても、その時々に応じた対応が必要です。そのためには、冷静に状況を判断し、平常心でいることが大切ですね。