百田 最近は以前より自己中心的な要望が増えている気がします。うちは、老眼鏡を100円で売っているんですけど……。

生活 えっ、100円で眼鏡が買えるんですか?

百田 はい。最近あるオジサンが、「1つはずっと使えているのに、こちらは1ヵ月たったらつるが折れた。不良品だ」とクレームを言ってきた。パートさんに聞いたら、どうやら交換の常連のようで、「眼鏡オジサン」と呼ばれていた。(笑)

呑屋 それは確信犯ですね。

百田 過去に新品と交換したがゆえに、今回も、となる。「保証はどうなっているんだ」と詰め寄られたので、「100円の商品なので保証はありません。眼鏡を忘れた時にとりあえず使うものでして、保証が必要でしたら、眼鏡の専門店でお求めになったらいかがでしょう」とご説明しました。そのうえで新品と交換し、「今後は交換いたしませんので」と、やんわり出入り禁止にして終わりにしました。ただし、出禁にした後もお見えになるお客様はけっこういます。話を聞いてもらえるから。

呑屋 相手をしてほしいんですね。

百田 そうです。そういう方は、クレームはきっかけにすぎず、結局、関係ない話をしてくるんですよ。息子が結婚しなくて、とか。ふんふんと話を聞いてあげると、「あなた、よかったらうちの息子どう?」と。あんたがお姑さんになるなら絶対にいやだよ、と思いますが(笑)。家庭に不満があったり、誰にも話を聞いてもらえない孤独な方でしょうね。

生活 寂しい方の筆頭といえば、高齢の男性。その割合が近年どんどん増えています。そういう方は、とにかく語る(笑)。「妻も天国に行ってしまい」というところから始まり、延々と話して、こちらが電話を切ろうとする気配を察すると、話がまた元に戻る。(笑)

百田 100円ショップは、108円持っていけば「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と目を見て言ってもらえるし、クレームを言うと「何かありましたか?」と親身になって聞いてもらえます。そのために足を運ぶ方もいらっしゃるので、心理状態を想像して、「寂しい方なんだな」と鷹揚にかまえる努力はしています。