夫婦というより戦友、同志

常日頃から、私たちの会話はバレエのことばかり。バレエには終わりがありません。

尽きせぬ魅力があるので、常に掘り下げて考えて、バレエの本質を2人で追究するのが何よりも楽しく自然なこと。

空いている稽古場を見つけると、つい遅くまで稽古してしまい、「もう終わりにしたら」と、松山先生に言われることもしばしば。

そのたびに先生は車で自宅まで送ってくださいました。清水さんと私は、同じ目標を持っていました。

そして、高い目標に行く道筋がおそらく一緒だったのだと思います。何しろコツコツ、ああしてみようと追究するのが好き。

私はバレリーナで、清水さんは踊りながら振り付けもします。ものを創るアーティストとしては、お互いの領域には絶対に立ち入らない。

家にいると、私は気分転換に、プロ野球の広島カープの試合を見ることもありますが、清水さんはいつも本を読んだり音楽を聴いたりして、次にどんな舞台を作るか考えています。

夫婦というより戦友、同志のような存在。私たちの結婚式は、ずっと一緒にバレエをやっていくことを宣言した場だったのです。

清水さんと出会ったからこそ、今も踊り続けていられるのだと思います。

 

※本稿は、『平和と美の使者として 森下洋子自伝』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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平和と美の使者として 森下洋子自伝』(著:森下洋子/中央公論新社)

舞踊生活70年を超えてなお輝き続けているバレリーナ・森下洋子。広島に生まれたこと、そしてバレエとの出合いは必然だった。読売新聞連載「時代の証言者」に加筆のうえ単行本化。