ヌレエフとの稽古

ヌレエフは、常に何かを学び取ろうとする方です。子供の頃から故郷のソヴィエト連邦で基礎訓練を積み、古典の型を身につけていました。

さらにバレエの発祥の地、ヨーロッパでその本質を自由に学びたいと考えたからこそ、彼は亡命までされたのではと思います。

『平和と美の使者として 森下洋子自伝』(著:森下洋子/中央公論新社)

《ヌレエフは1961年に亡命した後、まず英国ロイヤル・バレエ団でマーゴ・フォンテインの名パートナーとして頭角を現した。そして、フレデリック・アシュトンの『マルグリットとアルマン』、ケネス・マクミランの『ロミオとジュリエット』、ローラン・プティの『失楽園』、モーリス・ベジャールの『さすらう若者の歌』と、名だたる振付家の名作を初演で踊った》

稽古を通して、私のステップを深めてくださいました。「ここはオーバークロスして」「鎖状の軌跡を描くから上半身をきれいに見せられるんだ」などと言いながら実際にやって、ステップの連続性、身体の使い方を教えてくれます。

私が一生懸命練習してできるようになるのを見届けると、とてもうれしそう。また、この時は、ヴァリエーションを教えてくださいました。独特の扇子の使い方もとても丁寧に。