松山バレエ団の団員たちとともに踊る森下さん(写真提供:松山バレエ団)
コロナの流行を受け、多くの芸能活動が中止やオンライン配信になったりと影響を受けました。現在は元の形に戻りつつありますが、令和ならではのデジタルな表現方法も模索されているようです。そんな芸能の世界でも、長い歴史を誇るクラシックバレエ。今回は、舞踊歴70年を超えて舞台に立つプリマバレリーナ、森下洋子さんのバレエ史を振り返ります。森下さんは「エリザベス女王がお亡くなりになった今、温かいお言葉をいただいたことが、かけがえのない素晴らしいことだった」と言っていて――。

エリザベス女王の即位25周年記念公演

1977年から、海外で踊る機会が増えました。

秋のある日、松山バレエ団の事務所に国際電話が入りました。かけてきたのは、私が敬愛するルドルフ・ヌレエフ本人。

11月にロンドンで開かれるエリザベス女王の即位25周年記念公演に出演しないかと言うのです。

《この記念公演は、英王室メンバーが臨席するチャリティー『ロイヤル・バラエティ・パフォーマンス』の特別版。1912年に始まり、かつてはビートルズ、最近はレディ・ガガと世界の一流エンターテイナーが出演している》

すぐに出演すると決めると「何を踊ろうか。『ゼンツァーノの花祭り』か『ドン・キホーテ』はどうだろう」とヌレエフ。私は『ゼンツァーノ〜』を踊ったことがなかったので、『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥに決まりました。

稽古のためにウィーンへ行ったのですが、その時「6時から4階の稽古場でリハーサルをしましょう」とヌレエフが書き残してくださったメモは、大切な記念品。額に入れて、今も家に飾っています。