言葉、身体、生活のリハビリに励む

手術後、私に付き添っていた夫が言うには、ICUにいた時から私に悲愴感はなく、ニコニコしてしゃべっていたようです。夫の問いかけに「うん。お母さん、わかんないから」と、意味不明の言葉を繰り返す。それがおかしくて、2人でゲラゲラ笑っていたと言います。

日々会話するうちに、「もう、何だかわかんないわけ、かわぐさんに」と私が言うと、「かわぐさん? 看護婦さんのこと? 看護婦さんに何を言っても伝わらないんだね」と夫は私の言いたいことを汲み取り、少しずつ意思疎通ができるように。私の語彙も3つ、4つと増えていったんです。

体が元気になってくるとリハビリテーションも始まりました。リハビリには、身体の機能を回復させる「理学療法」、食事や洗濯など日常生活の動作を訓練する「作業療法」、話す、書く、聴くなど言語をトレーニングする「言語聴覚療法」の3つがあります。

ただし、手術を受けた大学病院でリハビリができるのは1ヵ月と決められていて。年が明けた1月に、リハビリ病院に転院して訓練を続けました。

言語聴覚療法では、まず自分の名前と住所を書く練習。清水ちなみって私の名前なの? とピンとこない私には、これが難しい。右手が使えないので左手で鉛筆を持つ練習も必要でした。テストも受けました。たとえば、雨が降っている絵に添えられた「晴れ、雨、雪」の選択肢から正解を選ぶ。こんな簡単な問題が、最初は5問中2問しか正解できませんでした。