「今はとても幸せ。おおげさでなく、人生バラ色だと感じています。リハビリを続ける間、一度も絶望したことはなく、むしろ病気をしてよかったとさえ思うんです。」

作業療法の訓練では、お茶も淹れられず、缶切りも使えないんですから、自分に呆れましたよ。助かったのは、服の脱ぎ着の訓練です。Tシャツを脱ぐ時は、両手首をクロスして裾を持ち、そのまま腕を上げればスポッと脱げる! 子どもの頃に教わったのでしょうが、改めて習って感動してしまいました。

リハビリ病院の入院期間は90日以内と決められているため、4月半ばには退院することに。引き続き週2回通院してリハビリを行い、その後は理学療法士の先生が営む個人の治療院に5年半通いました。おかげで、右手の握力が戻ってきて、体がずいぶん動くようになったのです。

言語聴覚士の先生が主宰する高次脳機能障害相談室にも3年ほど通いました。そこではパソコンで文字を打つ練習も。かつてはタイピングの速さに驚かれた私ですが、キーの位置を覚えるところからです。もしかしたらパソコンで何か書けるようになるかもしれない、と夢中で練習しました。

ファスナーの開け閉めができるようになるのに2年、髪をゴムで縛るのは5年以上かかったかな。今も右手はあまり動かず、多少の不自由はあるものの、主に左手を使って料理や洗濯などの家事も普通にやっています。語彙力は手術前の30%ほどでしょうか。それでも家族との日常会話はなんとかできています。

ここまで回復したのは、リハビリの先生方のおかげ。そして、家族のサポートがあったからこそ、こうして生活ができていると思います。