(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
圧倒的なオーラを放つトップスターの存在、一糸乱れぬダンスや歌唱、壮大なスケールの舞台装置や豪華な衣裳でファンを魅了してやまない宝塚歌劇団。初の公演が大正3年(1914年)、100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」には「花・月・雪・星・宙」5つの組が存在します。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第58回は「スマホの『思い出機能』が出してきた写真」のお話です。
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)

前回「いつかは言ってみたいフレーズ「年齢は単なる記号」と「バリ3!」。小学校での講演テーマと選曲に悩む」はこちら

スマホの「思い出機能」が出してきた写真 

スマホが毎朝、「1年前」「2年前」の今日撮った写真を勝手に出してくれます。
「思い出機能」という機能のようですが、おかげで記憶力の乏しい私も、去年の今、一昨年の今何をしていたかを振り返ることができます。 

ある朝、表示されたのは「4年前」。
たまに出る「4年前」「5年前」の写真には、これどこ?何の写真??という記憶にございませんの写真もあり、朝から記憶力が試されます。
しかし、その日の写真は鮮明に覚えていました。

殿様のような格好の私。
私の地元で「国民文化祭・にいがた2019」という文化の祭典が催され、即位されたばかりの天皇皇后両陛下がご臨席されました。
その開会式では、偉人や先人、伝統芸能などが絵巻物のように登場するステージが披露され、私は「世阿弥」「上杉謙信」「良寛」を演じました。 

新潟にゆかりのある先人達を演じて欲しいと、最初にお話を頂いた時、返事を渋りました。男役、しかも宝塚メイクもせず男役になれるのか、一緒に舞台に立つのは、世界的に活躍している新潟のダンスユニットChibi Unityの若者たち。
ダンスで表現する彼らと、そこにジョイントして現れる「世阿弥」「上杉謙信」「良寛」。 

……全く想像が出来ません。

Chibi Unityの皆さんは、若いながらも世界最高峰のダンスコンテストで優勝したり、今年はアメリカズ・ゴット・タレントでゴールデンブザーを獲得した世界的ダンサーたちです。
いまどきの若者に、男役の私。
そして、新潟の様々な伝統芸能、綾子舞、仮山伏の棒遣い、能生白山神社の舞楽、片貝の木遣り、角兵衛獅子、佐渡おけさの皆様が、このストーリーに加わります。 

どんな舞台になるのか、全く想像できないながらも、
人生で二度とないであろう天皇陛下の前で演じるという機会に、「やらせてください」とお返事をしたのでした。
浮くであろう男役の自分の姿に多大な不安を残しながら…。