やはりロシア人、ということになるらしい
次のグループは湾岸諸国とヴァージン諸島とかチャネル諸島などのタックス・ヘイブンから。湾岸諸国はスーパーカーとともにやってくる御曹司たちの母国だが、タックス・ヘイブンからの投資家の相当数がロシア人だといわれている。
一大勢力である香港人が買う物件は実際に住む住宅中心だが、ロシア人たちは違う。投資目的かというとそうでもなく、あえていうならばロシア国内からタックス・ヘイブンに逃避させた金を「ロンドンの高級物件」に注ぎこんで保有している。
彼らはロシア国内に富を保有するリスクを誰よりもよく知っている。洗浄済み資金を、モスクワよりもはるかに安全なロンドンで建物の形に変え、その眺めにうっとりする。秘密の貯金通帳をほれぼれと見つめる成金のように。
彼らは安い物件は買わない。彼らは場所と価格で物件を選ぶ。一等地とされるハイドパークの東側のメイフェア、南側のベルグレイヴィア、チェルシー、サウス・ケンジントンなど。そして6億から20億円程度の家が、2016年から2年間で1000戸も売れている。
簡単にいうと、大きくて高くて目立つものが好きなのだ。チェルシーやサウス・ケンジントンが人気なのは、すぐ近くのテムズ川の向こう側にあるヘリポートが使いやすいからだという。
不動産売買という大きな話ではなく、衣料・宝飾・家具といった一般消費の面でいうと、ロンドンの高級店で目立っていたのは1980年代にはオイル・マネーのアラブ人、1990年代にはバブル経済下の日本人だったけれども、2000年代に入ってからはやはりロシア人、ということになるらしい。