温泉記号の歴史

この温泉記号がどこで始まったのかについては議論もあるようだが、最近よく知られるようになったのは群馬県安中市の磯部温泉。

江戸初期の万治4年(1661)に土地争いに関する絵図に温泉を示す記号が2つ描かれていたのが日本最古の事例とのことだ。

あちこちに温泉マークが目立つ大分県の別府温泉。「地理院地図」令和2年(2020)4月10日ダウンロード。<『地図記号のひみつ』より>

 

現地のJR信越本線磯部駅の北口ロータリーには「日本最古の温泉記号発祥の地」と題する石碑も建てられており、湯壺から湯気が上がっている絵図の記号が刻まれている。ただしその揺らいだ湯気は1本しかない。

日本の地図作成を担ってきた国土地理院の前身である陸軍陸地測量部は、温泉の記号を明治20年前後に関西地区で作成された2万分の1「仮製図式」で初めて用いた。

当初は「温泉」で、「明治33年図式」から「礦泉(鉱泉)」となるのだが、温かいものに限らず冷泉も含めて記載することになった。

ちなみに「図式」とは各種地図における記号とその運用方法を定めた規程で、明治から現在に至るまで20回近くの改訂が行われてきている。