アシスタントも一緒に食卓を囲むようになったのは、長女が生まれた頃に1年ほど葉山に住んだのがきっかけでした。都内と違って帰りが遅くなると外食できるお店もなく、毎日コンビニ弁当というのはかわいそうで。「じゃあ家で一緒に作って食べればいいじゃない」と思い至ったのです。

献立は、栄養バランスが偏らないように、野菜から肉まで毎晩4品くらい。東京に戻ってからもその習慣が続いたのは、毎日ちゃんと温かいものを食べることが健康にいいと思ったからです。

とはいえ、アシスタントのほぼ全員が包丁も触ったことがない状態だったので、私が手取り足取り教えました。盛りつけも、あまりひどいと夫から「食べ物はきれいに見せないと」なんて写真家目線の厳しいチェックが入るので、みんな食器の選び方にも気をつけるようになっていきます。だから事務所から独立する頃には、誰もが料理上手に成長しているのです。

20年以上続けてきた、大人数で作りたての美味しいご飯を食べる習慣。その時間をともにしてきた子どもたちにとっても、いい経験になったのではないでしょうか。友だちと遊びに出かけても、みんな必ず夕飯だけは食べに帰ってきていましたから。

ティーンエイジャーになれば、食後はスマホやパソコンをいじるため自室に引っ込んでしまいがちですよね。それが寂しいなと思った頃、デザートも作り始めたんです。できたてのアップルパイの良い匂いが漂ってくれば、自然と個室からリビングに出てくるでしょう。(笑)

お茶を淹れて、たわいもないおしゃべりをする。それだけでも、表情や雰囲気から「少し元気がないな」「何かあったのかな」と気づくものです。きょうだい同士も、一緒にいるとなんとなく相談ごとが始まったりして。食卓はずっと、家族をつなぐ場だったと思います。

夫と2人の時間も増えましたが、離れて暮らしている子どもたちは今も、美味しいご飯を求めて定期的に帰ってくる。結局にぎやかなわが家です。(笑)