親族で集まって食事会。母・洋子さん(左から2人目)の顔にも笑みがこぼれる(写真提供◎桐島さん)

母の台所はいつもオープンだった

昨年公表したように、母は14年頃からアルツハイマー型認知症が徐々に進行し、現在は横浜のマンションで住み込みのヘルパーさんと暮らしています。

認知症が進むと食事を拒否するケースがあると聞きますが、食べることが大好きな母に限って、その心配はまだいらないようです。よく食べるし、ちゃんと出すこともできる。今年86歳ですが、おかげさまで体調はすこぶる良好です。

ただ、外国の料理ばかり好んで食べていた母も、最近は和食など味つけがあっさりしたものを食べるようになりました。私は50歳を過ぎて体が和食を求めるようになったのに、母は80代でようやく(笑)。そのほうが体にはいいので、娘としては少し安心しています。

時々、ローリーと母の3人で食事へ出かけることも。母は最近のことは忘れがちですが、昔のことはよく覚えている。だから、家族で何度も行ったレストランで定番のメニューを囲むんです。「あの時、あんなことがあったね」なんて思い出話をすると、母も嬉しそう。

未来の話をするのもいいみたい。母は旅が好きだから、会いに行くと必ず「今度はどこへ行く?」と聞いてきます。きっと、本人が行くのはもう難しいでしょう。

でも、「大好きなマティスのコレクションがあるエルミタージュ美術館は行かなくちゃね」なんて話をすると、顔がパッと明るくなるんです。

そして必ず、「その街にはどんな美味しいレストランがあるかしら」(笑)。食への意欲は、母の生きる気力としっかり結びついているようですね。