経済産業省によると、日本で上映された映画の本数は2010年の716本に対し、20年には1,017本と1.4倍以上に増加しています。そんな映画業界でも知らない人のいない名物宣伝プロデューサーが叶井俊太郎さんです。数々のB級・C級映画や問題作を世に送り出しつつ、会社は倒産。“バツ3”という私生活を含めて波乱万丈な人生を送ってきましたが、膵臓がんに冒され、余命半年との診断を受けています。「残りの時間は治療に充てず、仕事に投じることに決めた」叶井さんが、多大な影響を受けたという映画評論家・江戸木純さんと「余命半年論」について話し合ってみると――。
もし、余命半年を宣告されたら
叶井 江戸木さんが余命半年って言われたら何をしますか?
江戸木 余命半年だったら何もしないかな。仕事とかもしない。
叶井 仕事しないで何すんの。
江戸木 何するか分かんないけど、この30年仕事しかしてないからね。旅行も仕事がらみでしか行ってないし。
叶井 余命半年になったらどっか旅行行くとかそういうこと? でも実際そうなったら、まずしないでしょ。
江戸木 したいなと思うよ。余命半年になったら仕事やり続けなきゃいけない動機もないから。でもそうは言いつつ、やっぱり仕事するかもしれないけどね。案外そこが元気の源かもしれないからさ。結局あと半年の命って言われたって、半年後じゃ映画館だってもう埋まっててこれから好きな映画をかけられるわけでもないしね。だから何がやりたいかを考えず時間も含めて半年いるかもしれないけど。でもあなたを見てると、余命半年と言われても、半年たっても生きてるけどね。
叶井 じゃあ半年って言われたらもう仕事しないんですか?
江戸木 実際にはしないわけにもいかないんだけどさ。しかけてる途中の仕事がいっぱいあるだろうから。権利抱えている映画が常時10本じゃきかないからね。自分で権利持ってるものとか、永久に持ってるものとかもあるから、それをどうするか決めるだけで半年終わっちゃう。