3年連続で「女芸人No.1決定戦 THE W」のファイナリストになったお笑いコンビ・Aマッソ。テレビ・ラジオ・YouTubeなど多ジャンルで活躍し、幅広い層から人気を得ている中、ネタ作りを担当してる加納愛子さんはエッセイや小説も執筆。鋭いワードセンスと視点、キレキレの文章が大きな話題を呼んでいます。今回は、加納さんが幼いころに大阪で出会った個性の強い“おっちゃんたち”をテーマにしたエッセイをご紹介します。
思い出のおっちゃんたち
子どもの頃、大阪の住吉にあるうちの家にはしょっちゅう色んなおっさんが遊びにきた。親父の地元のツレのおっさん、親父とおかん共通の知り合いのおっさん、「世話なってる先輩や、挨拶せぇ」なおっさん、「ツレちゃうわこんなやつ(笑)」なおっさん。
子どもからすればおっさんの細かい分類なんて知ったこっちゃなかったが、夕飯の席にはやかましいおっさんが当たり前のように座っていた。みんなおかんの出した適当なおかずをつまみ、何が面白いのかわからない会話でゲラゲラ笑い、論じ、けなし、ビールを飲む。小さいグラスに何度も瓶ビールを傾ける。
なぁおっちゃん、そんな面倒くさいことせんと大きいコップに注いだらええんちゃうの? ほんまわかってへんなガキは。あのな、注ぐ行為も引っくるめて酒やんけ。
そうやっていつもおっさんはちょっとウザかった。おっさんが来ると、普段家族それぞれが座っている夕食時の定位置を変更しなければいけない。別にそれほど場所にこだわりもないけどさ、なんでおっさんが最初に座るところ選べるねん。不満を言ってもしょうがない、どんなおっさんも立場は立派な客人なのだった。