「絵を描くのは、小さい時から好きでした。当時も描いている間は嫌なことを忘れられて、楽しかった覚えがあります」(撮影:木村直軌)
芸人、ボクシング選手、女優、アーティスト……さまざまな顔を見せるしずちゃん。結婚して初めて感じる幸せとは?(構成=山田真理 撮影=木村直軌)

「地球なんて滅びたらいいのに」が口グセ

5月に銀座、8月に浦和で人生初の個展を開くことができました。それだけでも嬉しいことやのに、大勢の人が私の絵を見るために、わざわざ来てくれたことが本当にありがたくて。

個展に出したなかで一番古い作品は、まだ短大生の時にスケッチブックへ描いた絵です。その頃は、「地球なんて滅びたらいいのに」が口グセの人生最暗黒期。中学から始まった「体が大きいコンプレックス」をこじらせ、英語が好きで入った短大でも勉強に身が入らず、将来の目標も定まらないまま悶々としていました。

暇やったので、ある日なんとなく、図工の授業で使っていた絵の道具を引っ張り出して、描き始めたんですね。

絵を描くのは、小さい時から好きでした。当時も描いている間は嫌なことを忘れられて、楽しかった覚えがあります。でも久しぶりに実家の押入れから引っ張り出して見てみたら、楽しさはあまり出てへん。長い廊下に女の子がぺたんと座っていて、周囲にはたくさんの矢印。見るからに「悩んどるなあ」と。

個展はいつかできたらと思っていました。商店街が好きやから、いろんな街で空き店舗を借りて、ご近所のおじいちゃんおばあちゃんに楽しんでもらえたらええなあ、なんて。

ところがある時、事務所の先輩のジミー大西さんが、「本気で絵をやりたくなったら、その道の人を紹介してあげるよ」と声をかけてくれたんです。そこからとんとんとんと、今回の個展が決まった。でもまさか、初めての個展が銀座の三越だなんて思いもせんかったです。ほんまに、私の絵でええの?

普段の仕事ではお客さんと直にお話しする機会が少ないので、会場で感想を聞くのは新鮮でした。ある時、緑のカマキリの絵を買ってくださった方がいて、聞くと「あえて緑の背景に描いているところが好きだ」と。まさにそれが私の狙いやったので、絵として誰かに伝わったことがめちゃくちゃ嬉しかったです。