厚生労働省が公表している令和4年の「雇用動向調査」の結果によると、令和4年の一般労働者の離職率は11.9%、パートタイム労働者の離職率は23.1%でした。若手の育成が難しいと叫ばれる中、「いままでの育て方とは異なる発想で、若手育成を行う必要がある」と話すのはリクルートワークス研究所 主任研究員の古屋星斗さん。その古屋さんいわく、「OJTだけでなく、業務から離れた知識や経験習得の機会であるOff-JT機会も減少している」そうで――。
若者の「キャリア不安」
若手社員たちが自らのいま置かれた状況をどう認識しているのかを見ていく。
実は、職場環境は好転しているにもかかわらず、ストレス実感は減少していない(図表1)。例えば、「不安だ」とする回答者は2019-2021年卒では75.8%に上っている(1999-2004年卒が新入社員だったときの66.6%や2010-2014年卒の70.1%と比較して高い)。
この「不安」という要素について、現在の新入社員に掘り下げた質問をした。例えば、「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」という質問に対して「強くそう思う」「そう思う」と回答した者の割合は、現在の新入社員の48.9%に及んだ。
実際に若手社員から、「居心地は良いが、このままだと社外で通用する人間になるために何年かかるのかと焦る。何か自分で始めたりしないと、周りと差がつくばかりなのではないか、このままではまずいと感じている」といった声は本当によく聞かれるのだ。
こうした若者のキャリアへの焦燥感を、経営や人事に携わる上の世代がどの程度掴めているだろうか。
筆者は若者のなかに顕在化しつつある「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのでは」「学生時代の友人・知人と比べて、差が広がっているように感じてしまう」といった、職業生活に関する「このままでは……」という感情のことを「キャリア不安」と呼んでいる。
会社が自身の職業生活の安定を保証してくれないなかで、「キャリア自律せよ」と叫ばれている。しかし自律できるだけの経験や機会が与えられないのではないか、という危険性に薄々気づいた若手に焦燥感を生んでいる。