高級茶葉「八女伝統本玉露」の品質と、茶葉の味わいを楽しめる美味しい淹れ方とは――(『八女茶――発祥600年』より)
高品質な玉露の生産地である福岡県八女。そこで作られる八女茶の栽培方法は室町時代から受け継がれ、600年を迎えました。全国きっての高級茶葉「八女伝統本玉露」の品質と、茶葉の味わいを楽しめる美味しい淹れ方とは――

究極の味わいを生み出す伝統技術

濃厚な滋味、「覆い香」と呼ばれる青海苔のような特有の香り、そして、艶のある鮮緑色―このような玉露の特徴は、被覆栽培という茶樹に覆いをかける栽培法によって生まれます。

被覆栽培の第一の目的は、お茶の品質を高めることにあります。遮光することで、葉のアミノ酸類、特にうま味に関係するテアニンが増加します。

そもそも玉露の栽培には手間と時間がかかります。その栽培過程において、昔ながらの技法を用い、さらに丹念に手間をかけ作られるのが「八女伝統本玉露」です。第一部―49八女伝統本玉露には厳格な生産条件が必須とされます。とりわけ大きな特徴である栽培要件には、次の3点があります。

1.自然仕立て栽培
自然仕立てとは、茶樹の枝を自然に伸ばす仕立て法のことで、剪せん定ていを行うのは収穫後の1回のみ。こうすることで茶樹本来の力が生かされ、芽の一つひとつに十分な養分が送られます。

2.天然資材を用いた被覆栽培
茶樹を直接覆わずに、棚を用いる被覆栽培。八女伝統本玉露の場合は、稲わらなどで編んだ天然資材を用います。これにより、被覆内の温湿度が芽の生育に最も適した条件となります。

3.手摘みによる収穫
昔ながらの「しごき摘み」で、新芽の柔らかい部分だけをていねいに収穫。二番茶は摘まず、1年分の養分を一番茶だけに集中させます。

ほかにも定められた生産条件があり、八女茶の流通拠点であるJA全農ふくれん茶取引センターに上場され、共販されるものを「八女伝統本玉露」としています。

このように手間と時間をかけて作られるからこそ、八女伝統本玉露は日本最高峰の玉露としてその地位を認められているのです。

八女伝統本玉露の茶葉。細く長く針のように撚られ1本になる(『八女茶――発祥600年』より)