公共交通機関としてのバスの役割
この記事ではバスをはじめとした公共交通機関について研究している駒澤大学文学部地理学科の土谷敏治(土は正しくは「土に`」の異体字)(つちたにとしはる)教授に取材のうえ、私の見解と研究者である教授の視点を交えてバスの未来を探る。
まず、あらためてバスとは何のために存在していて、現在どういった立ち位置なのだろうか。もちろん地域によって異なりひとくくりには言えないものの、主に大都市圏内では様々な客層に利用されており、多くの人にとっての移動手段となっている。
しかし、大都市圏外になると需要そのものが減り続け、多くのバス路線が減便・廃止となっている*1。その中で、高齢者や高校生など自家用車で移動することができない交通弱者向けの移動手段として最低限の本数が残っているのが現状だ。
なぜ需要が減っているかというと、人口減少もあるが、一番はマイカーの普及だ。1960年代は地方でもマイカーが普及していなかったため、通勤や通学、買い物など様々な目的で日常的にバスを利用している風景があった。
データを見ると*2、1966年には乗用車の台数は230万台にすぎなかったが、2022年ではその約30倍の6200万台になっている。
数十年かけてマイカーの台数は増加を続け、一方でバスの需要は減り続けた。ただ、ここ数年は乗用車の保有台数が6200万台ほどで高止まりしているため、需要の減少も落ち着くかもしれない。
【*1】とはいえ、大都市圏内も安泰とは言えない。東急バスの渋12という、渋谷駅から二子玉川駅を経由して高津営業所までを結ぶ路線がある。これが2022年に土曜日の1本のみに大幅に削減され、代わりに途中の駒沢大学駅から高津営業所までを結ぶ玉12系統に置き換えられてしまった。減便された渋谷駅~駒沢大学駅の区間は他の系統が重複して走っているため、バスの本数が多いことは確かだが、従来は乗り継ぎなしでいけたことを考えれば利便性は低下した。このように、多少非効率であっても利便性を重視した路線を設定できていたのだが、そういった余地も徐々に減りつつあるというのが現実だ。
【*2】自動車検査登録情報協会による車種別自動車保有台数の推移https://www.airia.or.jp/publish/statistics
/ub83el00000000woatt/hoyuudaisuusuii05.pdf