「私も立ち上がって何か役に立つことをしよう――。その時強く思ったのが基金設立のきっかけです」(写真提供:平原綾香さん 以下すべて)
19歳で「Jupiter」を発表し、2023年12月でデビュー20周年を迎えた歌手の平原綾香さん。音楽活動だけでなくミュージカルの出演など多方面で活躍する中、2015年には「平原綾香 Jupiter 基金」を設立し、以降開催しているチャリティーコンサートは今年で8回目となります。音楽活動の根源や歌に込める思いを伺いました(構成◎上田恵子)

子どもの頃から音楽がごく身近に

わが家は父(サックス奏者の平原まこと)の影響で、子どもの頃から音楽がごく身近にありました。――と言うとよく、英才教育だと思われがちなのですが、実際は真逆。姉(シンガーソングライターのAIKA)も私も音楽の道に進みなさいと言われたことさえありませんでした。また、クラシックのカバーでデビューすると、クラシック音楽の家系だと思われるのですが、祖父がジャズトランペッターでもあり、元々はジャズ家系なんです。昔から“お笑い家族”で、誰が皆を一番笑わせられるか、常に競っているような家族でした。

両親は共に忙しいはずなのに、家族との時間を大切にして、いつもいろんな所に連れて行ってくれました。月に1度のペースでキャンプに行ったり、車でどこかに行く時も歌のワンフレーズをみんなでハモるゲームをしたりして、とても楽しい子供時代を過ごしました。

父はジャズ、ポップス、ロック、演歌、童謡など、あらゆるジャンルの音楽に携わっていたサックス奏者だったので、家には父の参加作品のCDがジャンルを問わずたくさんありました。ソロ活動に加え、スタジオミュージシャンとしての仕事も多く、安全地帯やさだまさしさんなど多数のアーティストの楽曲やドラマ・映画の劇伴に呼ばれ、多い時は年間1000曲を超えるレコーディングに参加していました。 またNHKの紅白歌合戦では歌手の方の指名でソリストとしてサックスを吹いたり、毎年レコード大賞でサックスセクションを務めたりと、たくさんのアーティストの方々に愛されるミュージシャンでした。

私が音楽の道に進んだのは、間違いなく父の影響です。もしも父がサックスをやっていなかったら私は何をしていたでしょう……? 動物が好きなので、ドックトレーナーを目指していたかもしれません。

平原まことさん