現在、中高年層向けの婚活が注目されている。結婚相談所や知人の紹介などで新たな伴侶と出会った人たちは、成熟した大人同士ならではの苦労と喜びを経験していた。(取材・文=篠藤ゆり)

私がシニアの婚活について取材を始めたのは、1年半ほど前。本にまとめるため、活動中の人、成婚した人、結婚情報サービスの担い手など、さまざまな立場の人に取材してきた。

離婚後シングルマザーとしてがんばってきた人や夫と死別した人は、「この先もずっとひとりで生きていくのか」と立ち止まる時期がある。そこで浮上するのが、再婚という選択だ。ただ若い時の結婚とは違い、しがらみも多い。問題をどう乗り越え、新たな人生を出発させたのか。3人の女性に、お話を伺ってみた。


75歳で中高年向けの結婚相談所に入会

まずは最年長、78歳の山口直美さん(仮名)。趣味のダンスで鍛えられているせいか、背筋がピンと伸び、60代にしか見えない。4歳下の森村信二さんとは2年前に中高年向け婚活パーティで出会い、約半年後、一緒に暮らし始めた。森村さんには2回離婚歴があり、2人の子どもがいるが、没交渉だ。

直美さんは66歳で離婚。当初、再婚するつもりはまったくなかった。それどころか、離婚は人生の汚点だという古い考えにとらわれ、しばらくは別れたことを後悔していたという。

3人の娘の手が離れた35歳から、大手企業に正社員として就職。結婚当初は優しかった夫は、直美さんが働き始めた頃から女性関係が絶えなくなった。夫婦喧嘩になると、夫は「おまえみたいなやつとは別れる」と言い、人前で直美さんを馬鹿にするなど、モラハラもエスカレート。直美さんの定年後、子どもたちが独立したのを機に、離婚を決意した。

「厚生年金も退職金もあったので、一人でやっていける。これでつらい人生から解放されると思いました」

直美さんにとっては、生まれて初めての一人暮らし。昼間はダンススクールに通ったり、母親の介護で妹たちと顔を合わせたりするので気がまぎれるが、夜、誰もいない部屋に戻ってくると、寂しさが身に染みる。

数年後、直美さんは同年代の親友から、ホテルで開催される会費5000円の婚活パーティに誘われた。彼女は夫と死別後20年ほどシングル生活を続けていたが、そのパーティで知り合った男性と交際を開始。すると直美さんとの外出より、男性とのデートを優先するようになった。

「私もこれでいいのかなと思い、75歳で中高年向けの結婚相談所に入会しました。私が選んだパーティコースは、入会時に3万5000円払うと月に4~5回開かれるパーティに何度でも参加でき、成婚料もかかりません。でも2年間、これといった人と出会えず、諦めかけていた時、彼と出会った。若々しいし、会話も弾み、『この人だ!』と。彼目当ての女性は多そうだったので、電話がかかってきた時は嬉しかったし、絶対ゲットしたいと張り切りました」