ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は「光の当て方」について。桜林直子さんとのポッドキャスト番組「となりの雑談」は放送開始から1年が過ぎた。番組では、桜林さんとの意見の相違に驚く機会が多いそうで――
”考え方の違い”の背景を考える
雑談を生業のひとつにしている桜林直子さんとのポッドキャスト番組「となりの雑談」が、開始からあっという間に1年を迎えた。おかげ様でリスナーの数もどんどん増えて、嬉しい限り。
ポッドキャスト番組は2つやっていて、もうひとつは堀井美香さんとの「OVER THE SUN」だ。こちらは中年女の悪ふざけがメイン。とはいえ、2人とも一生懸命生きてはいるので、たまに真面目な話にもなる。堀井さんと私は正反対とも言える人生を歩んできて、まったく異なる趣味嗜好を持つけれど、考え方やものの見方のベースは同じだ。
一方、桜林直子さん、通称サクちゃんと私は、世の中の見え方が大きく異なる。よって、意見の相違に驚くことが多い。そこが醍醐味で、驚いているうちに1年が過ぎた。実りの多い1年だった。
「となりの雑談」を始めてから、考え方の違いはものの見え方の違いに起因し、見え方の違いは経験の違いの産物だと身をもって知った。意見の相違は単純な二元論ではなく、個々の歴史が連綿と繋がった先に出た答えであると考えを改め、背景に注意深く思いを馳せるようになった。
考えの不一致があった時、「あの人はネガティブだから」「あの人は慎重すぎるから」と、的外れではないが、その場限りの決めつけで片付けていたあれこれを、そうならざるを得なかった経験があったのだろう、そうあることで好機を掴んできたのだろう、と考えられるようになった。結果、たとえ真っ向から否定されても、不愉快な気持ちに囚われづらくなるし、無用な対立も避けられる。