社会派色とエンタメ色が同居

朝ドラことNHK連続テレビ小説『虎に翼』の人気がとどまるところを知らない。現時点までの視聴率は前作『ブギウギ』、前々作『らんまん』を超え、SNSのX(旧ツイッター)では連日トレンド入りしている。なにより視聴者の応援の声が熱い。

なぜ、観る側はこの朝ドラに惹き付けられるのか。ここまでの30回余の物語を振り返ってみたい。

まず民放ドラマや従来の朝ドラの大半とは異なり、テーマが骨太であるところがいい。それでいてお説教じみたところはなく、センスのいいギャグと胸が熱くなるエピソードが散りばめられている。社会派色とエンタメ色を同居させることに成功している。

テーマはもはや説明するまでもないはず。不平等への抗議と多様性の尊重だ。第1回のファーストシーンも1947年に施行された新憲法の第14条をヒロインの猪爪寅子(伊藤沙莉)が新聞で読む姿だった。

第14条が性別や人種、社会的身分などによる差別を禁じているのは知られている通り。この条文が嫌いな人は少数派ではないか。一方でこの条文が厳守されていると考える人も少ないはず。この状態を現代人は半ばあきらめているが、寅子たちは戦前から実行しようとしているのだから痛快だ。