近年そのメカニズムが次々と科学的に解明され、注目を集めている「東洋医学」。2024年5月19日(日)放送のNHKスペシャルでも「東洋医学を〈科学〉する 〜鍼灸・漢方薬の新たな世界〜」と題し、研究の最前線が紹介されました。その番組制作に携わっていたのがNHKメディア総局でチーフ・ディレクターを務める山本高穂さんです。山本さんが、島根大学医学部附属病院にて臨床研究センター長を務める大野智さんと執筆、東洋医学の謎に迫った著書『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』から一部を紹介します。
鍼のルーツは石や骨?
ツボ、つまり経穴を刺激して痛みや不調を和らげようというのが鍼灸です。
このうち鍼の起源は、新石器時代に石でつくられた石鍼や動物の骨でつくられた骨鍼と考えられています。
当初は、現在のように「刺す」というよりは、「傷つける」ことで膿(うみ)を出したり出血させたりするような治療だったと推測されています。
想像すると今よりはちょっと痛そうですよね。
その後、銅や鉄などの金属が使われるようになり、中国最古の医学書『黄帝内経』が編纂(へんさん)された紀元前200年頃の時代には、現在の鍼の原型とも呼べる形の鍼が登場しました。