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昨年は、モトザワ自身が、老後の家を買えるのか、体当たりの体験ルポを書きました。その連載がこのほど、『老後の家がありません』(中央公論新社)として発売されました!(パチパチ) 57歳(もう58歳になっちゃいましたが)、フリーランス、夫なし、子なし、低収入、という悪条件でも、マンションが買えるのか? ローンはつきそうだ――という話でしたが、では、ほかの同世代の女性たちはどうしているのでしょう。「老後の住まい問題」について、1人ずつ聞き取って、ご紹介していきます。

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ヨーロッパ在住のアーティスト

海外在住の日本人が、老後をどこで過ごすのかは、悩ましい問題でしょう。海外で生涯を終えるのか、それとも65歳や70歳で帰国するのか。外国人と結婚した専業主婦の場合、夫との食生活や文化の違いが年を取るほど苦痛になり、老後は日本に帰りたい、という話をよく聞きます。経済的に夫に支えてもらえるなら、問題は住む場所だけです。

ところがシングル女性の場合、事態はもっと複雑です。どこで過ごすかは、食い扶持、つまり仕事の問題と切り離せないからです。海外での仕事を「いつまで続けるか」、日本で仕事は「あるのか」。帰国イコール、今までの仕事をやめたり、永住ビザがあるなら永住権を捨てたりすることになります。

日本の国民年金は、任意加入して払っていたら受給できますが、厚生年金がない分は、貯蓄や投資で備えておくか、働いて補う必要があるでしょう。でも高齢で帰国して日本で働くのも厳しそうです。さらに住む家はどうするのか。実家があるのか、施設に入るのか。検討すべき変数はたくさんありそうです。

ヨーロッパ在住のアーティスト、史子さん(仮名、58歳)は、老後について全然考えてきませんでした。今頃になって、「老後どうなっちゃうんだろう。お先真っ暗」と憂えます。いずれ帰国するとしても、時期は未定。国民年金も、ずっと払っているけれど、よく分かっていません。当地ではもちろん賃貸暮らし。猫2匹と同居しており、「とりあえず、この猫たちがいる間は帰れない」と言いますが……。

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