婚姻の際、夫婦がどちらかの姓にしなければならない夫婦同氏(どううじ)制。義務づけているのは世界で日本だけだ。同姓にするか別姓にするかを選べる《選択的》夫婦別姓導入を求める声は根強いが、半世紀にわたり進まない。同性婚の法制化は、同性同士の結婚を認めない民法と戸籍法の規定が「違憲状態である」と札幌高裁が判断、次の一歩が期待されているが――。法律婚を望む2人を阻む〈制度〉の課題。酒井順子さんとともに婚姻にまつわるあれこれを木村草太さんに学ぶ(構成:篠藤ゆり 撮影:本社・武田祐介)
憲法24条1項の「両性」の意味するところ
酒井 どちらかというと、同性婚の法制化のほうが一歩進んでいるようにも見えますね。
木村 日本ではじめて同性婚に関する訴訟が提起されたのは2019年でした。当初、国は「婚姻とは生殖関係を守るためのもの」という方向で議論をしていたんです。そんなわけあるか、というのが原告の主張であり、世間の反応でした。
酒井 子どもを産まなくても、生殖能力がなくても、結婚する男女はいますよね。中高年で結婚する人も増えているのに。
木村 さすがに国もそれでは説明がつかなくなってきたので、最近は「社会的承認がない」という説明にシフトした。要は世間が認めない、世間にいやがる人がいる、という意味です。
酒井 それに対し、裁判所が違憲判決を出した。
木村 21年3月の札幌訴訟の第一審判決は、原告側の完全勝利でした。判決文を読むと、反対論を強く切り捨て、国側のグダグダした主張に対し、「わけのわからない言い訳してるけど、自分たちに理がないことはわかってるんでしょう。婚姻は生殖関係じゃなくて親密関係を守るためのもの。バカ言うんじゃない! 以上!」みたいなニュアンスの内容で(笑)、私もびっくりしたくらいです。
酒井 愛し合い、共同生活をしようという2人を守るのが婚姻制度、という理解でいいですか。
木村 そうですね。その親密関係の帰結として、男女の場合には子どもが生まれることもある。だから子どもや養子についても規定したにすぎない。
同性カップルも共同生活をするし、養子を育てることもあるわけで、婚姻の法的効果は異性カップルと同様に適用されなくてはいけないでしょう。