(写真:stock.adobe.com)
2024年4月30日、写真家の武田花さんが亡くなった。父は昭和を代表する小説家・武田泰淳さん、母・百合子さんは夫の死後に発表した随筆が大ベストセラーに。そんな二人を編集者として担当したのが、後に作家となった村松友視さんだ。武田家と長く親交を重ねてきた村松さんが花さんを偲ぶ(構成=篠藤ゆり)

前編よりつづく

父から贈られたカメラ

花さんが泰淳さんからペンタックスSVをプレゼントされたのは、19歳の時だそうです。

泰淳さんが「うちの娘は、何もしなくてぼーっとしている。学校の勉強もできないし、困った」とある方に相談したところ、「カメラでも持たせれば何かやるんじゃないか」と言われたとか。結果的に、それが花さんの人生に大きな意味を持つことになったわけです。

写真家・武田花が使っていたのは、フィルム交換がしにくいライカM2だそうですが、交換にかかる時間を煩わしくは思っていなかったみたいですね。一瞬のシャッターチャンスを狙って、ピュッと写真を撮るタイプではないんでしょうね。